東京の満員電車は生きている間に解決しなさそうな件

地域(江戸・東京・首都圏)

新年度を迎えました。新しく社会人になった方、会社や勤務地が変わった方、そして先週までと何一つ変わらない多くの方々が金属の箱に押し込められて運ばれていきます。

写真はイメージです

新年度特有の「混雑による遅延」が収まる頃には、今は不安をのぞかせながらも期待に満ち溢れた顔つきの新入社員たちも、濁った目をした立派な社会人に変わっていることでしょう。

あと何年満員電車に乗らなきゃいけないんだと。でも、小田急みたいに輸送力が増えたり、ゆったり着席通勤もできるようになるし、あと少子高齢化で人も減っていくから、混雑もそのうち…

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いいえ。残念ながら、私たちが生きてる間に首都圏の満員電車が解決することはなさそうです。

2045年の人口推計 東京以外は減少へ

27年後の2045年には東京を除くすべての地域で、人口が今より減少するという推計を国の研究所がまとめました。東京に人口が集まり、地方では大幅に減っていく傾向が改めて浮き彫りとなりました。

出典:NHKニュース(2018年3月30日 15時32分)

国立社会保障・人口問題研究所は、5年ごとに人口の将来推計をまとめていて、今回は自治体別の推計を公表しました。2045年の総人口は1億600万人で現在より2千万人以上減少すると言われており、秋田県や青森県では40%前後の減少が予想されています。

 

東京の人口も減るって言ってたじゃないか

しかし、今回の推計でそれに劣らず衝撃的だったのが、30年たっても東京の人口は減らないということでした。

これまでの推計を見ると、「東京の人口も2015年頃がヤマだ」→「都心回帰とかで結構増えたけど、2020年をピークに減りはじめるでしょう」→「最近すごい増えたけどこれから一気に減るはず」からの「やっぱり当面へりませーん」なので、いろんな前提条件に影響を及ぼすことになるかもしれません。

生来人口推計とは「今生きている人がどれだけ生き残るか」と「新しくどれだけ生まれるか」を計算するものなので、出生率と死亡率が大きく変わらない限り、比較的精度の高い予測です。ところが、都道府県や市町村単位の予測になると、社会構造の変化や住居としての人気など社会的な要因が大きく関係してくるので、これだけ変わってしまうのです。

File:JR Central SCMaglev L0 Series Shinkansen 201408081006.jpg

2045年はリニア新幹線が大阪まで開業しているかもしれない 写真:Hisagi(Wikimedia Commons)

2045年ともなると北海道新幹線は札幌までつながってますし、リニアも全線開通している可能性があります。東京・大阪が1時間ちょっとで移動できる時代に、誰がどこに住みどのように働いているか、全く想像することができないですよね。

 

東京は分かった、他はどうなる?

ところで、東京で働く人は東京人だけではありません。少しい古いデータですが、2010年の大都市交通センサスにおける、23区への鉄道通勤・通学者の居住地の割合です。

都内に住んでいる人が半分弱で、神奈川・埼玉・千葉がそれぞれ15~20%ほどを占めています。3県の人口はどうなるのでしょう。

増加するのは東京都だけと書かれていたように、3県も2020年頃をピークに減少していき、2045年には今より1割ほど人口が減ると推計されています。

ただし、相模湖だって神奈川ですし、埼玉も千葉も奥座敷には広大な”田舎”を抱えています。東京にも奥多摩とかありますしね。そこで、東京23区と各県の政令指定都市だけを抽出して見てみると以下のようになります。

先ほどのグラフとは随分印象が変わったと思います。23区の人口は東京都全体よりも大きな伸びを示していますし、川崎やさいたまも2045年の人口は今より増えると予測されています。

面積の広い(=”田舎”を抱える)横浜や千葉は減少となっていますが、これも都心よりの区だけで抜き出してみれば違った結果となるでしょう(面倒なのでそこまでは見ていません)

千葉県緑区ののどかな風景

横浜市泉区ののどかな風景

鉄道の利用者数は当然沿線人口に左右されますが、より直接的に影響するのが就業者数です。働く人の数が増えれば、鉄道で通勤する人が増えるのです。働く人の数は人口だけで決まるものではありません。総人口が減っても働く人の数が増えることだってあり得ます。

 

働く女性と働く高齢者の増加

たとえば女性の社会進出です。日本の女性の労働力率は、特に55歳未満の若年・中年層において、主要国と比べて高い水準ではありません。

政府は男女雇用機会均等法の制定以来、女性の社会進出を後押ししています。この流れは強まることはあっても後退することはないでしょう。

人口の半分の女性たちの能力が、それぞれが望む形で、社会で発揮されるようになれば。そうなれば、日本はもっともっと強く豊かになれるはず。(中略)

働く女性たちが、より働きやすく、能力を発揮できるように。子育てをしながら、もっと社会で活躍できるように。理工系や農業分野でも、どんどん結果を残せるように。そして、家庭での経験も活かし、またいつからでも働けるように。そんな社会を実現する、「輝く女性応援会議」です。

出典:首相官邸「輝く女性応援会議

また経済的な理由から共働きも増えています。最近は若い夫婦だけでなく、パートタイム労働などによる40代夫婦の配偶者収入が増えているそうです。

近年、共働き世帯の増加が続いている。2000年から2016年にかけて専業主婦世帯は235万世帯減少したが、共働き世帯は、206万世帯(年間13万世帯)増加した。

とくに2010年以降の伸びは年間24万世帯(2010~2016年平均)と、リーマンショック前の年間9万世帯(2000~2007年平均)から加速している。

大野晴香「共働き世帯の増加と消費への影響」『みずほインサイト(2017年3月24日)』みずほ総合研究所

成果主義の導入や年功序列制度の廃止により、これまでのように年齢と共に賃金は上がらなくなります。共働きで何とか世帯収入を維持しても、年金や社会保険料の負担は増えていき、その社会保障制度すら維持されるか分からない、そんな時代を迎えています。

定年と年金支給開始年齢の65歳への引き上げなど、社会構造の変化は高齢者の生き方も大きく変えていきます。将来的には年金支給開始年齢は70歳、75歳へと段階的に引き上げられるとの予測もあり、生涯現役社会が到来するかもしれません。生産年齢人口(15~64歳)だけでは重要なものは見えなくなっているのです。

過去10年間の東京都の就業者数の推移を示したグラフは、これまで述べた社会的な変化が既に大きく進行していることをはっきりと物語っています。

男性(15-64歳)の就業者数は、景気回復の影響を受けてここ数年僅かに上昇しているものの、10年でみればほぼ横ばいです。一方、女性(15-64歳)は2010年以降右肩上がりで上昇し、20%ほど増加しています。65歳以上の高齢者は男女とも大きな伸びを示しており、特に女性は(もともと絶対数が少ないとはいえ)44%も増加しています。

人口は減らない、働く人(働かざるを得ない人)は増えていくとなると、通勤というスタイルそのものが大きく変化しない限り、鉄道利用者が大きく減ることは期待できないのです。

となれば、あと30年は利用者が大きく減らない前提で対策をしていくしかありません。地方の過疎化問題とは別に、東京都心にも大きな課題が突き付けられた、そんなデータだったような気がします。