2019年春、千代田線に北綾瀬駅直通列車誕生―そういえば綾瀬駅0番ホームって何なの?

[1957-1973]

文春オンラインで「都心の秘境・北綾瀬駅 “消えてしまうかもしれない”0番線の謎」と題して、千代田線北綾瀬支線を取り上げた記事を見かけました。

東京メトロ千代田線。代々木上原~綾瀬間を結び、両端ではそれぞれ小田急線・常磐線と相互直通運転を行う東京都心の大動脈路線のひとつだ。が、そんな千代田線の東の端...

綾瀬・北綾瀬の区間列車の歴史を振り返りながら0番線の話をする、よくある鉄道小ネタ記事です。

もともと、車両基地をこの地に建設するにあたって「人が増えたら駅を作る」という地元との約束があったとか。そんな事情もあって、千代田線本線部分全通の1年後、1979年に北綾瀬支線と北綾瀬駅が開通したのだ。3両編成の短い列車が綾瀬~北綾瀬間で折り返し運転をするというパターンは、その頃から今に至るまで変わっていない。

記事の性格を考えれば過度にマニアックな情報までは求められていないのは承知の上ですが、ちょっと物足りない点が多いので勝手に補足することにしました。

北綾瀬ゆきの支線の列車は、綾瀬駅1番線ホームの東の端っこに、ホームの一部を削り取ったように設けられた「0番線」から発車する。すでに1~4番線があった綾瀬駅に、後付で北綾瀬支線のホームを設けた結果だ。

この記事を読むと、1979年から綾瀬・北綾瀬間を3両編成の折返し列車が走るようになって、綾瀬駅にはそのために0番線が作られ、その運行パターンは現在まで変わっていないって思ってしまいますよね。

車庫用地買収時の地元民との約束

まず北綾瀬駅ができることになった経緯から補足しましょう。

1965(昭和40)年1月から始まる綾瀬車庫の用地買収交渉の過程で、地元から出された要求については、千代田線建設史に次のように記載されています。

関係人からは,車庫が建設されると環境が悪化するのみで,地元には何らのメリットもないとして、①車庫付近の駅設置の要求、②車庫を横断する歩道橋(生活道)設置の要求、③買収される農地の代替地提供の要求、④買収価格増額の要求が出され、交渉は難航した。

①については,将来の居住人口の動向を見てその時点で駅を設置する可能性を残し、②についてはこれを受け入れることとし、③については、営団は農地法上農地を保有できないのでこれを断り、④についても買収価格の正当性を説明し折衝を重ねた結果、昭和40年12月買収契約を完了した。

出典:千代田線建設史 p.473

「将来の居住人口の動向を見てその時点で駅を設置する可能性を残し」という回りくどい表現だけみると、いかにも「善処します」「前向きに検討いたします」というやんわりと断っていくニュアンスのように見えますが、千代田線建設当初から綾瀬・北綾瀬間の運行に向けて具体的な準備がなされています。

開業時から用意してあった支線用折返しスペース

千代田線の綾瀬・大手町間は1966年6月に着工し、1969年12月20日に北千住・大手町間が、1971年4月20日に北千住・綾瀬間が開業しています。綾瀬駅付近は2面3線の複合島式ホームに本線・車庫線の立体交差が絡み合う複雑な駅構造となり、さらに国鉄常磐線の高架化及び複々線化と駅の移設工事が並行して進む大工事となりました。

こちらが1971年開業当時の綾瀬駅の配線略図です。代々木上原方面行きホームの松戸寄り、赤い線を引いた部分が切り欠き状となり、そこに行き止まりの短い線路が引かれています。

現在0番線として使われている線路が、建設時から綾瀬・北綾瀬間の折返し運転に用いることを想定して用意してあったことは、千代田線建設史にも明記されています。

また、車庫線を将来営業線として使用することを考慮して、常磐線から進入するホーム始端側に延長76m、幅員4.5mの折返し運転用のホームを設けた。

出典:千代田線建設史 p.436-437

待望の北綾瀬駅が設置される

千代田線が開通すると、綾瀬・北綾瀬付近は予想以上のペースで宅地化が進みました。

北綾瀬駅は案外早く実現することになりました。

この北綾瀬地区は、千代田線建設当初から将来の開発状況に合せて新駅を設置する予定となっていた。千代田線建設当初、この地域は人口密度が低く需要もなかったので営業路線としなかったが、千代田線の開通利便もあいまって急速に住宅開発が促進されたこと、また、環状7号線道路の経過地でもあることから団地などの建設が活発で著しく人口が増加し、沿線住民から駅設置の要望が強く出されるようになったのである。

出典:千代田線建設史 p.1083

航空写真を見ても、1960年代は田畑が広がるばかりだった土地に民家が増え始めているのが分かります。車庫の横には都営アパートも建設されています。

今昔マップ on the web ((c)谷謙二)によって作成

営団は1978年5月に綾瀬・北綾瀬間の免許申請を行い、同年9月1日に免許を受けると、1979年2月に着工、早くも同年12月1日から綾瀬・北綾瀬間の営業を開始することになります。

0番線はいつできたのか

開業時に準備工事が済んでいた綾瀬駅0番線ホームは、1979年12月1日の開業から使われていたのかというと、実はそうではありません。

綾瀬・北綾瀬間の運転設備は本線と同一のものとした。同区間の運転計画は、輸送需要の予測から3両編成による区間運転とすることとなった。本線列車3個列車に区間運転列車1個列車を引き当てることとし、本線3分時隔時には9分時隔、本線6分時隔時には18分時隔でダイヤを策定した。また、10両編成の出入庫列車の旅客扱いは行わないこととした。

綾瀬駅では、乗換えの便宜をはかるため、3線の中線をこの区間運転の着発に使用することとなった。従来、この中線で折返しをしていた10両編成の列車は、北綾瀬方の側線を使用するいわゆる奥取りの取扱いとなった。

出典:千代田線建設史 p.1086(強調部は引用者)

つまり図にするとこういうことになります。赤い線が北千住方面から来て、綾瀬駅で折返しする列車の進路です。オレンジの線が北綾瀬方面から来て、綾瀬駅で折返しする列車の進路です。

ある程度の年齢の方であれば覚えていらっしゃるのかもしれませんが、実は北綾瀬支線の開業当時は、北綾瀬から来る折返し列車は2番線・3番線ホームを使って折り返していたのです。丸ノ内線の中野坂上駅と同じような、両方向の乗り換えが可能な非常に便利なスタイルです。準備しておいた0番線の設備はあえて使わずに、利便性を優先してこのような形で開業したのでした。

北綾瀬利用者からすればどう考えてもこっちの方が便利なのですが、これでは千代田線・常磐線本線列車は上り列車は1番線、下り列車は4番線しか使えません。綾瀬駅での折返し列車は4番線に到着すると乗客を全員ホームに降ろしてから引き上げ線に入り、折返して1番線に入ってきます。乗客を全員降ろすまで後続列車は4番線に入れず、遅延の原因となります。

千代田線は開業から長らく朝ラッシュ時は約3分間隔の運転で、全ての電車が常磐線との直通運転を行っていました。1980年代に入ると千代田線の混雑率が急激に悪化したことから朝ラッシュ時間帯の増発を開始するのですが、全てを直通列車にするほど常磐線は混雑していなかったので、綾瀬駅折返し列車を設定して増発することになりました。そうなると北綾瀬・綾瀬間の折返し列車に2番線・3番線ホームをぜいたくに使わせる訳にはいかなくなってしまい、当初の想定に戻る形で「0番線」を新設し、1985年3月14日から北綾瀬行きの列車はそちらに移ることになりました。

10両編成が北綾瀬駅に直通すると何が起こるか

それから20年以上が経過して「北綾瀬駅10両化計画」が動き始めます。

文春オンラインの記事には「開業以降、北綾瀬駅周辺の宅地化は一気に進み、利用者数は当初から3.5倍ほどに増えた。実は、その結果本線への直通運転が実現することになったのだ!」と書かれています。確かに開業時と現在の利用者数を比較すれば3.5倍なのですが、これでは本質は見えません。

北綾瀬駅の乗降客数の推移をみると、実は開業から15年で3.5倍まで増え、その後は長らく横ばいが続いています。ここ数年は確かに再び増加傾向にあるのですが、北綾瀬駅10両化計画が発表されたのは2014年2月のことで、当然実際の検討はそれより前に行われているのですから、10両化と利用者の増加は関係がないことが分かります。

東京メトロ(本社:東京都台東区 社長:奥義光)では、北綾瀬駅のホーム延伸工事を実施するとともに、出入口の新設を行い、輸送改善及びお客様の利便性向上を図ります。

10両編成対応のためのホーム延伸工事については、既存の3両編成対応ホームを綾瀬駅方面に約135m延伸(屋根及びホームドアについても延伸)することで、代々木上原方面への直通運行に向けた整備を行います

※ダイヤについては、計画が決まり次第お知らせいたします。

東京メトロプレスリリース(2014年2月28日)

2014年2月のプレスリリースには「輸送改善及びお客様の利便性向上を図ります」とあります。東西線の工事でも「輸送改善・混雑緩和」と謳っているように、メトロ用語では輸送改善とは遅延対策のことを指します。ではなぜ北綾瀬駅のホームが延びると遅延対策になるのか、それは次のようなロジックです。

有楽町線豊洲駅に折返し設備を設置したように、ダイヤ乱れの収束には列車の間隔を調整できる折り返し設備が有効です。ところが綾瀬駅で折返し運転できるホームは2番線・3番線の1本しかないので、2本目の折返しを行うには4番線でいったん乗客を降ろしてから引き上げ線で折り返しするしかありません(乗客を乗せたまま引き上げ線に入るのはNGです)。前述のように降客に手間取ると後の列車が駅に入れず、更なる遅れの原因になってしまいます。本線を長時間塞いでしまっては、せっかくの折り返し設備も意味がなくなってしまいます。

北綾瀬駅に10両編成の客扱いが可能なホームを新設すると、乗客を乗せたまま北綾瀬方面に向かうことができるので、北綾瀬駅を事実上綾瀬駅の2本目の折り返しホームとして使うことができるようになります。常磐線直通列車と綾瀬駅折返し列車(赤実線)・北綾瀬駅折返し列車(赤点線)はそれぞれ平面交差をせずに支障なく運転できるので、列車間隔調整の自由度が飛躍的に向上し、ダイヤ乱れの収束が早くなるという寸法です。

0番線ホームの役目は終わってしまうの?

文春オンラインの記事では「綾瀬駅0番線は消えてしまうかも!?」なんてセンセーショナルな見出しが付いていますが、東西線で走っていた05系電車を支線用に改造したばかりなので、3両編成がなくなることは当面ありません。朝晩の通勤時間帯を除けば今まで通り3両編成の折返し運転が中心となり、引き続き0番線が使われることになるでしょう。詳しいダイヤの発表は2018年の年末くらいになると思われます。

いよいよ10両編成の乗り入れ開始まで1年を切って、工事も佳境に入っているようです。工事の詳しい内容や、現在の様子は「未来へのレポート」にお任せするとしましょう。

東京メトロは2018年度を目標に千代田線北綾瀬支線のホームを現行の3両から10両対応に延長し、千代田線本線との直通運転を開始することを発表しました。現在北綾瀬駅では...

またダイヤが発表される頃に記事にするかもしれません。とりあえず楽しみに待ちましょう!