池袋駅「幻の44番出口」の謎を追え!

営業

読者の方からお便りをいただきました。

いつも池袋駅を利用しています。私の記憶によれば、池袋駅に存在する出口は「43番」までのはずなのに、先日「44番出口」を見つけてしまいました。

しかもドラクエなどでよくある、序盤から見えているけどカギを手に入れないと行けない場所にあったのです。なぜこんなことになってしまったのでしょうか。

この秘密を知った私は消されてしまうかもしれません。写真を送るので助けて下さい。

「39番出口」のお便りをくれた方でしょうか。今回は深刻なお悩みのようです。

池袋駅39番出口の謎を追え!

JR、東武、西武、東京メトロが乗り入れる池袋駅は、各社の地下通路が複雑につながっているため共通かつ連番の「出入口番号」が割り振られて、全ての出入口に番号が記載されています。

有楽町線の果てにある「39番」出入口

メトロで一番数字の大きい「43番」出入口

池袋ショッピングパークにつながる「33番」出入口

丸ノ内線池袋駅の出口案内板を見ると、全ての出入口がずらーっと案内されています。東口の出口は「22番」から「43番」まで存在しており、欠番はないようです。

しかし、お便りに添付された写真には…「44番」の数字が浮かび上がっています!!

しかも、階段の外は柵で囲まれてる! これ、後で宝箱を取りに来るやつやー!!

取材班は池袋駅の平面図から潜入ルートを推測し、現地調査を決行することにしました!

さっそく怪しい扉を発見。中から警備員が出てきました。やはり宝箱を守っているのでしょうか。

警備員が出ていった隙に、扉の中に突入します!!

扉の先には下り階段と、上り階段があります。もちろん上り階段を選びます。

殺風景な階段を上っていくと…(ダッダッダッ)

ここだー! しかし、宝箱はありません。写真を撮ってから戻ろうとしたら、階段に座ってボッチ飯をしている女性と遭遇し、気まずい感じになりました。

と、茶番はこのくらいにしておいて、とりあえず「44番」出入口の位置関係は明らかになりました。「池袋ショッピングパーク」の南館、丸ノ内線改札口につながるエスカレーターのすぐ横、赤く丸印をつけた崎陽軒の隣の階段です。

池袋ショッピングパークwebサイトより

警備員は「防災センター」から出てきたのでしょう。上り階段の先が「44番」出入口ですが、下り階段の先には「地下駐車場」があります。

池袋ショッピングパーク(ISP)は、東京オリンピックを目前に控えた1964(昭和39)年9月に開業しました。駅前広場の下に地下街を建設する構想からスタートしますが、交通事情の悪化に対応した地下駐車場計画に変更され、最終的に地下道・地下街を併設する地下駐車場として建設されるという複雑な経緯を辿っています。

開業時(1964年)の地下1階平面図 小笠原正巳「都市計画事業と特許会社」『新都市』18(10) より

当時の平面図と比較しても階段の構造に変化はないようなので、変わってしまったのは「地上」の方だと考えるのが正しそうです。別の資料に地上の様子を示す図がありました。

開業時(1964年)の地上平面図 小笠原正巳「池袋地下道地下駐車場」『建築と社会』44(10) より

当時はまだ出入口番号は存在していませんでしたが、分かりやすくするため現在の数字を記載しています。この図によれば「44番」出入口と「28番」出入口の間にはバス乗降場があり、トロリーバスを含む15路線のバスが発着していたというのです。

ということは、バス利用客が地下街に入りやすいよう(さらに地下鉄に乗り換えしやすいように)ここに出入口を設置したと見て間違いないでしょう(同時に地下街中央部から地上への避難経路を確保する目的もあったと思われます)。

1971年の池袋駅東口 『東京・昔と今ー思い出の写真集』ベストセラーズより

ところが1971年の写真を見ると、「44番」出入口と「28番」出入口の間は緑地帯に囲まれて、バスは入ることができなくなっています。正確な時期は不明ですが、1968年3月のトロリーバス廃止と連動して、バス乗り場の再編があったものと思われます。

「44番」出入口の付近には横断歩道がないので、結局「28番」出入口の方まで回らねばならず、開業から5年ほどで「44番」出入口の役割は失われてしまったのです。

その後しばらくは「44番」出入口と「28番」出入口の間には通路が設けられていましたが、この通路が閉ざされ、いよいよ「44番」出入口が完全な孤立に追い込まれる出来事が起こります。

2004年、明治通りの渋滞の一因となっていたタクシーの待機列を解消するために、「44番」出入口と「28番」出入口の間の緑地と通路を撤去して、タクシープールを設置することになったのです。

東京都都市整備局『総合駐車対策マニュアル』より

こうして歩道と隔絶された「44番」出入口は、駅構内図や地下街案内図では案内されない「幻の出入口」となってしまったと思われます。

現在はタクシープールの手前に喫煙所が設けられており、「28番」出入口側からは「44番」出入口の姿は全く見えなくなっています。

ジョルダンの駅構内図など、今も「44番」出入口を案内している地図もあります

最後の謎は、この「幻の出入口」が「44番」というラストナンバーである意味です。これは周辺にある出入口が連番なのに対し、ひとつだけ番号が飛んでいることからも意図的に付けられたと考えられます。

(おそらく1970~80年代に)池袋駅に各社共通の出入口番号が付与された際、事実上役割を終えていた「44番」出入口に最後の番号が割り振られたのでしょう。